三兄夫婦がやってきました。
Hapoさん(母)は、息子(三男)の顔を見るなり
「Tさん(あだ名)、Tさん~♪」と節をつけて呼びます。
「おお~、ばあちゃん(兄たちは母のことをばあちゃんと呼ぶ)わかるか~。」
三兄ことTさんは、Hapoさん(母)に会う前に
「俺のことわかるかな~?
分かるかって聞いてみるかな~」とちょっと不安げでした。
久しぶりですから、その気持ちもわかりますけれど、
Hapoさんを試すような言い方はしないでね。
分からないことで不安になるのだから、
分かるかどうか聞くのではなくて、
自分から名乗って安心してもらえばいいのだから。
と事前に釘をさしていたのですが、
その心配もなく
Tさんの顔を見るなり名前を言ってもらえて
破顔する三兄でした。
隣に居るその妻にも「Yさん~、Yさん~♪」と呼びかけます。
しばし、二人の名前を連呼するのは、
次兄夫婦が来たときと同じです。
そうやって記憶に刻もうとしているのだなと感じます。
その後、三兄は孫の写真や動画を見せますが、
次兄の時のように母はさほど興味を示しません。
ちいさな子供たちが、誰が誰だかわからなくて
混乱しているようです。
それよりも目の前にいるTさんのことが気になるようで
「Tさん、Tさん~ 変わらない~♪」と歌い出します。
そうね、彼は子供の頃と雰囲気は変わらないわね。
眉毛ふとめで、ガタイがよくて「西郷さん」って呼ばれてたわね。
っていうと、
「長男が、西郷さんみたいな、こいつ(三男)は俺の弟なんだぞ!って威張ってたわよね。 自分より幼い弟なのに見た目が強そうだから用心棒にしていたのよね~。」とHapoさんが話し出します。 実際は用心棒になんてなれませんけどね(^-☆
Tさんもワタシもきょとんとしてしまいましたが、そうでした、そうでした。すっかり忘れていましたが、そんなことがありました。
2、3才の頃、西郷さんと呼ばれていた三兄は、上野の西郷隆盛の像の周りに居た鳩のことを「蝶々~(飛んでいるもの意)」と追いかけていたことが、我が家の思い出話のひとつでした。 当時の記憶は当事者のには無いものの、親戚が集まるとたびたびその話をしたものです。
母の記憶が息子たちの幼少の頃に飛んでいきます。
スマホの中の覚えのないひ孫たちよりも、目の前のTさん(三男)のことのがほうがずっとリアルなことなのです。
「本人のわかっていること」を話すHapoさん(母)は、とても嬉しそうです。
これが「ユマニチュード」なのかしら。
面会時間ぎりぎりまでおしゃべりして、
「握手でバイバイバイ~♪」を三人分ちゃんと歌って
大きく手を振ってくれました。
この日もはりきってくれたHapoさん、ありがとね。