病室に入ってくるワタシをまじまじと眺めて
「いいわね。いつも地味な服ばかりだけど、
こういう明るい柄のほうがいいわよ。」
と、Hapoさん(母)が言ってくれました。
「自分で作ったの? 立って見せて。
ワンピースを作るなんて器用ねぇ~。」
Hapoさんが洋裁好きだったから、ワタシも作るようになったのよ。
Hapoさんのおかげよ。 感謝しています。
「いやいや、違うよ。そんなことないよ。」というように
手を振るHapoさん。
明るい色の服を着ていくと喜んでくれると思って
恥ずかしいけれど、花柄の服を着てきたのよ。
この生地はイギリスへ一緒に旅行したときに買った布よ。
「ずいぶん、物持ちがいいのねー。」
そうねぇ、もう30年も前の布よね。
作ってもあまり着ていなかったから、
まだ布はしっかりしているでしょ。
「そうね。木綿でしょ? 夏らしくて涼しげでいいわよ」
ひとしきり洋裁談義をすると、Hapoさんも疲れちゃったのか
目を閉じてしまいます。
と、思ったら
「鍵かけた?」と突然聞いてきます。
自転車に鍵をかけ忘れたことを覚えていて心配してくれたようです。
そこから、乗り物に思考が変わったのか、
「車椅子にエンジンをつけてもらいたいわ。
そしたら、通路(廊下)をガーっと行けるじゃない」
電動車椅子ではなくて、エンジン付きというのがミソなのよね。
アクセルをブルルンとふかしてみたくなったのかな。
このところ、ずーっとベッドで過ごしていたのに
車椅子に乗りたくなったなんて嬉しい変化です。
「来てくれてありがとう。また来てね。」
「はい、また来ますね。」
と、握手でバイバイバイ♪
相変わらず、カルピスしか口にしないようですが、
しっかりとおしゃべりしてくれるHapoさんに会えることが
毎日の楽しみになっています。
それにしても、
エンジン付きの車椅子だなんて、
かつてはバイクが日常の足だったから、
その頃のことを
思い出したのかもしれません。