老母の握力

介護の入り口。老母(ローボ)と老娘(ロームス)のつれづれ。

8月15日に母と話したこと

8月のHapoさん(母)とのランチ会は、終戦の日でした。

 

母の住む市の広報(防災無線)で正午に1分間の黙とうをしましょうと

サイレンが流れた時、母は昼食後の昼寝中でした。

 

 

目が覚めたときに、寝ていてもサイレン聞こえた?と尋ねると

「どうしたの? 大雨警報?」と聞く母。

 

今日は8月15日だからよ というと

 

76年前のその日、

疎開先で終戦玉音放送を聞いたことを話しはじめました。

 

戦争が終わると間借りしていたその家を出なければいけなくて

引越しを何度かしたことが大変だったと言います。

 

神風が吹くから日本はぜったいに負けない

そんなことを信じなくてはいけなかったあの時代には

二度と戻りたくないと熱く語ります。

 

 

そして今は食べ物が豊富にあることが幸せだと言います。

ひもじい思いをしてきたからこそ、

今も食への思いが強いのかと思います。

 

「食べ物があるのを当たり前だと思っていたらダメよ。

異常気象で栽培できない日がくるかもしれないからね」と

いたくまじめな話もするHapoさん(母)です。

 

 

そんな母がもうひとつまじめに話したのが

「ベッドに敷くビニールを買いたい」ということ。

 

敷き布団を濡らしてしまうことがあるらしくそれを防ぐために

ビニールを敷きたいというのです。

 

そのために、防水シーツを敷いているはずよ、と言うと

普通のシーツしか敷いていないから、

ビニールを買いたいのだと言い張ります。

防水シーツは表面はパイル状なので

タオルのシーツだと思っているのかもしれません。

自分でベッドメイクをするわけではないのでどうなっているのか

理解できていない様子です。

ならばビニールを買いにいきましょうと

寝具を売っているお店に行き、防水シーツを一緒に買うことにしました。

 

お店に行くと、

「何をしにきたの?」

「なぜこのお店にいるの?」

 

状況が把握できなくなっているので、

敷布団に敷くビニールに使えるものを買いに来たのよと

説明します。

 

それを3回ほど繰り返し、売り場へいくものの

その売り場がお店のいちばん奥で母にしてみれば

千里の道に思えたようで、

「近道は無いの?」といいます。

 

ここをまっすぐ行くのが一番近道よ。

 

「そう、たまには歩かなきゃいけないものね」

10mにも満たない距離を懸命に歩く母、売り場から帰るときにも

「近道は無いの?」と聞きます。

 

「今日はたくさん歩いたからぐっすり眠れそうだわ」

 そうね、ホームの廊下より長く歩いたものね。

 

 

ようやく買い物を終え、自宅のマンションでひと段落したときに

買ってきた防水シーツを見せます。

「こういうのではなくて、ビニールが欲しかったのに」と残念がります。

 

防水シーツの裏を見てもらって

このつるっとした面がビニールの役目をしてくれるのよ。

ビニールの上に寝ると滑っちゃうし、肌さわりも悪いでしょう。

だから、体にあたる面はタオルみたいになっているの。

普段見ているのがタオルの面だから、シーツしか敷いてないと思っちゃうよね。

ホームの人がちゃんとこういうのを敷いてくれているから安心してね。

 

「そうなの? じゃあ今日買ったのはどうやって敷けばいいのかしら?

自分で敷けそうもないわ。ヘルパーさんに頼めばいいの?」

 

そうね、ホームに帰ったらヘルパーさんにお願いしましょうね。

 

 そんなやりとりをして母は納得したのかしないのか、

またうつらうつらと眠ってしまいます。

 

ホームに戻る時には、

「今日持って帰るものはまとめて袋にいれてね」

とお願いしてくるから

防水シーツを買ったことはちゃんと覚えているようです。

 

少し早いけれど と渡した

「バースディカードも一緒に入れておいてね」

と言います。

 

プレゼントはいらないといつも言うので

何も用意はしていなかったのですが、

防水シーツが誕生日プレゼントみたいになってしまいましたね。

 

「こうやってときどき会えることがいちばんのプレゼントよ」

と言ってホームへ帰っていった母です。