幼稚園のころ、母に連れられて初めて観た舞台のこと。
お武家さんの家の庭に大きな木があり
何かの事情でそれを伐採することになる。
その武士の妻は、どうにか木を切るのをやめてくれないかと
夫に懇願するが、決まったことなので止められない。
妻は観念するものの、木が切られていく姿を見て泣き崩れる。
実は、
妻はその木の精だったのです。
木が切られれば、この家に住み、妻として暮らすことができない。
大木の伐採は愛する夫との別れを意味していた。
当時の私にはとても難しい内容だったけれど、
木を切ればその女の人が死んでしまうということは理解できて、
そのクライマックスの木を切るシーンで
「ダメ~~~~~~!」と叫んでしまったのです。
劇場の空気が変わりましたよ。
なんとも言えない間が続き、、、
そして大拍手!
舞台の流れを壊してしまって、ごめんなさい。
子供ゆえに正直な気持ちを声に出さずにはいられなかったのです。
劇場から帰るときに母が、
「nokoにもお話の内容がわかったのね。」
と言ってくれました。
その観劇は、母が商店街の福引で当てたもの。
私を家に置いていけないので、仕方なく連れてきて
膝の上に私を座らせて観たのでした。
そのうち寝てしまうだろうと思っていたのに、
最後は前のめりで観ていたので母は私を押さえているのが大変だったと言ってました。
だって最前列で観たんですよ。
さすが福引です。
一等席ではありませんか。
当時住んでいた市では芸術文化に触れる機会を増やすことに力をいれていて
小学校に入ると年に数回ですが、観劇やオーケストラ演奏会、映画鑑賞などを
課外授業として行っていました。
そんな経験があるからか、観劇が身近なものになりました。
あの時の舞台女優さんは どなただったのか、
劇名はなんだったのか、知りたくなるときもありますが
記憶の片隅を時々思い出すことのほうが大切かなと思っています。